れいこさん
1953年〜2023年まで。
1953年、0歳
タイトル:印象の薄い子。
悪戯な2歳上の姉にかまっていて、寝ているか食べているかしか親には印象がなかったようだ。
1956年、3歳
タイトル:食べるもの植えてある庭。
庭に実のなる葡萄や柿の木があり、イチゴも春にはできた。家の塀の下にはニラが植えてあり、夕方、味噌汁に使うのに包丁で切ったりしていた。果物があるので、毛虫も多いが実用的な庭だった。
記憶の匂い:葡萄、柿、いちご、ニラ。
1958年、5歳
タイトル:毛糸と生地屋。
行きたくない幼稚園を辞めさせてもらい、姉が学校へ行っている間は母との平和な時間が過ごせた。当時、服やセーターは母が作っていた。小さくなったセーターは、解いて洗って、板に巻いて伸ばして、それをまた丸くボール状にして編み直すのだ。足りない分は違う毛糸を足して新しくする。石鹸のにおいのする優しいセーター。又、当時の生地屋さんでは、今は殆ど使われていないホルマリンのにおいが強く、鼻や目が痛くなるので長くは見ていられなかったが、新しい生地を見て、どんなものを作ろうかと想像することはとても楽しいことだった。
記憶の匂い:ニット、ホルマリン(生地屋さん)。
1964年、11歳
タイトル:嫌いなものがいっぱい。
この頃は、においのきつい物や感触の悪い物が嫌いだった。例えば豚の脂身、シイタケのヒダヒダ、ツンとくる長ネギ、喉に引っ掛かりそうな桃、青菜や山菜も避けたいにおいで食べることがきつかった。
記憶の匂い:豚の脂身、長ネギ、桃、葉物
1966年、13歳
タイトル:嫌いを克服。
苦手な食べ物が多かったが、苦手がある自分が許せなく、好きになる努力をすることにした。どうして、あの苦く青臭い山菜を親は、美味しいと食べるのか?私も好きになれるのか?を何回も試して、だんだん克服することが出来、おかげで今はほぼ嫌いなものは無いと言える。
記憶の匂い:苦く青臭い山菜。
1969年、16歳
タイトル:母とパン焼き。
初めてアルバイトをして、小さなガスオーブンを買った。シュークリームやクッキーも作ったがあまりうまくいかず、結局パンを焼くことに楽しみを感じ、又、母も巻き込み一緒にパン作りを楽しんだ。あのイースト菌の発酵やパンが焼けるにおいは、嬉しいにおいだった。
記憶の匂い:イースト菌が発酵するにおい、パンが焼ける匂い。
1971年、18歳
タイトル:原宿と青山
東京の専門学校へ通い始め、新しい事や、新しい食べ物にわくわくした時期だ。特に、原宿や青山には時々行って、町の様子や知らない店に入るのが楽しみだった。戦後の影響が多少残り、英字の店看板があったり、横浜のスーパーがあったり、今のラフォーレが出来る前は、絵本にあるような白い教会だった。表参道にも教会があり、知らない町、国に来たような錯覚を覚える町だった。その中で、今はチェーン店になっているが、青山ドンクは特別で、細いフランスパンにレバーペーストを塗り薄いレモンを挟んだカスクートが大人の味、海外のにおいを感じてお気に入りだった。
記憶の匂い:フランスパン、レバーペースト、レモン、海外の匂い。
1974年、21歳
就職して銀座の店頭で研修していた。みゆき通りで、まさに銀座の中心を感じた。店舗の人達や、勤務先が銀座1丁目だったので、研修を終えてから同僚と銀座の主にビアホールに行くことが多かった。そのビアホールは、今はあまりビアホールで見かけないエビのカクテルや生ガキがあり、新鮮でおしゃれな食べ物だった。
記憶の匂い:ビール、カクテル、シーフード。
1980年、27歳
タイトル:海外の刺激
初めての海外は、ハワイで食べ物も風もにおいも受け取りやすいさわやかな印象。ハンバーガーが大きくてびっくりしたことや、パイナップル畑を初めて見た。スーパーや町中にも果物があり、何気に甘いにおいを感じる町だった。
記憶の匂い:パイナップルなど果物の甘い匂い。
1984年、31歳
タイトル:アジアの衝撃。
以前の香港空港は町中スレスレにあり、飛行機が着陸すると、もう、豚骨スープに八角やらの香辛料と漢方薬が混ざったようで、当時の私には強烈なにおいだった。町中屋台の貝の色々な種類やシャコの大きさに驚き、ゆでたり炒めてもらったりして食べたことが新鮮だった。
記憶の匂い:豚骨スープ、八角、香辛料、漢方薬。
1988年、35歳
タイトル:ベトナムとの出会い。
ベトナムに行く前に仕事の打ち上げで、ベトナム料理やタイ料理が流行っていて、生春巻き等をとても新鮮に感じたし、多分この頃に「青いパパイヤ」というベトナム映画も見てその空気感や時間の流れ方に惹かれた。雑誌でも取り上げられていて、興味が沸き行くことにした。苦手な人が多いパクチーも、全然抵抗なく受け入れ美味しくいただき、新しい食べ物、食材に夢中になった。
記憶の匂い:生春巻き、パパイヤ、パクチー。
1993年、40歳
タイトル:シンガポール
シンガポールには社員旅行で行ったのだが、あの匂いが受け入れられない人が多いというドリアン屋に行き、ドリアンを初めて食べた。同行の人は一房で拒否して、残りを一人で食べたが、そんなに臭い?と思った。小説や旅行記などで船にドリアンは乗せられないとか、ホテルの部屋で食べてホテルからクレームが来たとかの話題がある割に、さほど感じなかったのは熟し方が足りなかったのだろうか?また、においに負けないほど美味しいか?とも感じた。何しろ沢山食べたから。
記憶の匂い:ドリアン。
2017年、64歳
タイトル:再びベトナムに。
久々に4回目のベトナムになったが、最初に行ったような新鮮さは薄れ、都会的な観光地になっていく様を感じた。
2022年、68歳
タイトル:今はぬか漬け。
今年に入ってからぬか漬けをするようになった。ファスナーがついた袋にぬか床が入っている物を買って野菜を入れて楽しんでいる。
記憶の匂い:糠漬け。
2023年、69歳
タイトル:新しい何かを。
自分が新鮮に感じる物、事、人との出会いを大切に感じられるように行動したいと思う。